社会保険労務士「その他」登録のすすめ
私は、「その他」登録の社会保険労務士です。
社会保険労務士(社労士)は、数ある士業の中でもその登録形態が変わっていて、士業として独立開業するための「開業登録」のほかに、「勤務・その他」登録というものがあります。
他の士業(弁護士や税理士など)も、登録するとことによりその資格を得ます。そしてその肩書を名乗ることができるようになると同時に、開業して依頼に応じて業務を行うことができるようになります。しかし、あえて開業する必要はありません。企業に雇用されて企業内○○士として活躍してもいいですし、何もしなくてもいい。士業としての登録形態はひとつです。
しかし、社労士だけは違います。
自分では開業せずに企業などに所属する、「勤務登録」というものがあるのは社会保険労務士だけです。そして開業もせず勤務登録でもない「その他登録」も、もちろん社会保険労務士だけの独自のものです。
「開業登録」はその名の通り、開業して依頼に応じて業務を行うことができます。「勤務登録」は、その所属する企業(団体)でのみ、社労士業務を行うことができます。どちらでもない「その他登録」では、結局のところ社労士業務を行うことができません。
それでは、「その他」登録とは、何のための登録なのでしょうか?
そしてこの「その他登録」社労士ですが、開業もせず、勤務先で活躍するでもない登録社労士なんて、ほとんどいないと思いませんか? 私自身、その他登録社労士になったときは、世間でも珍しい、稀有な存在なのだろう、と自負していました。
しかし調べてみると、そんなことはありません。
登録社労士約 40,000人中、「勤務等(勤務・その他)」として登録されている方が、15,000人強(平成29年09月現在)です。この「勤務等」の内訳(勤務とその他、それぞれの人数)は公表されていませんが、私の推測では、少なくみてもその何割か、おそらく数千人の「その他」登録の方がいらっしゃいます。
>> その他登録の社会保険労務士って、何人いるのだろうか?(推測)
ただし世間では、試験に合格したのに、開業予定もなく関連の勤務にも就いていない「その他登録予備軍」の方が、「その他登録」の10倍、数万人はいると考えられます。
>> 私が社労士を目指した、今となっては恥ずかしい理由
社会保険労務士、その他登録のメリット
みなさんの一番の関心事は、「その他」登録には安くはない登録料を払うだけのメリットがあるのか、ということだと思います。
「その他」登録には、このようなメリットがあります。
- 「社会保険労務士」を名乗ることができます
- 県会、支部に所属することになり、各種勉強会や講習会にも参加できます
- 社労士会から、いろいろなものが送られてきます。いいものも沢山あります
- 何とかモチベーションが保てて、法改正や動向などについて行けています
- 社労士として年月を重ねていけます。私は既に5年目の社会保険労務士です
(※後日追記:6年目に突入しました!)
>> 6年目に突入!私の「その他登録」社労士生活は、まだまだ続きます!
「なあんだ。たいしたことないじゃないか」と思いますか?
それでも私は「なぜ高いお金を払って登録するの?」と人に聞かれたら(聞かれたことはないですが)、と笑ってこう答えるつもりです。
「登録しないと行けない場所や見えないものが、登録前には想像もつかないくらい沢山あるのですよ。」
>> 社労士登録のメリット。開業しない勤務登録でもない「その他」登録は?
PCでこのサイトをご覧になられている方は、ブログタイトルの右に「社労士制度創設50周年ロゴ」が見えたと思います(スマホでご覧の方、ごめんなさい)。
こちらは、全国社会保険労務士会連合会の会員ページからダウンロードしたものです。
登録社労士である私は、こうして会員ページにも出入りできますし、ロゴを堂々とホームページに掲載することもできるのです。
>> まもなく創設50周年。社会保険労務士が広く知られて、私はうれしい!
ちなみに、ときどき「その他登録のメリット」として語られる、「雇用保険の基本手当(失業手当、失業保険とも呼ばれています)を受けることができる」ということは、私はメリットと考えていません。
登録しているかいないかと、受給要件を満たしているかどうかは、全く別の問題です。
>> その他登録や勤務登録なら、会社を辞めても失業手当が出ますが・・・
しかし私は普段は、社会保険労務士を名乗りません。そもそも気軽には名乗れません!
社会保険労務士たる者、社労士法に縛られます。
社会保険労務士法第一条の二(社会保険労務士の職責)
社会保険労務士は、常に品位を保持し、業務に関する法令及び実務に精通して、公正な立場で、誠実にその業務を行わなければならない。
- 「品位の保持」→これに関しては、何とかできると信じましょう
- 「業務に関する法令及び実務に精通して」→この自信がないのです
社会保険労務士を名乗る以上、「知らない」では済まされません。
ところが残念ながら、今の私には「知らない」「できない」ことがたくさんあります。
そのようなわけで、私が社労士であることを知っているのは、家族と、県の社労士会で登録を受け付けていただいた事務の方と、支部の新会員歓迎会に出席された十数名くらいです(一度お会いしただけですが)。
今のところ何もできないどころか、登録したためにできないことまであります。
社会保険労務士の業務は、社会保険労務士法第二条(社会保険労務士の業務)第一項に列挙されています。
この社労士業務として、社労士しか行えない「独占業務(いわゆる、1号業務、2号業務)」の他に、独占業務ではないコンサル業務(3号業務)も規定されています。
この社労士業務は開業登録をしないと、「他人の求めに応じ報酬を得て、業として」行うことははできません。
これは、同法第十四条の二(登録)に書かれています。
社会保険労務士法第十四条の二(登録)の抜粋
1 社会保険労務士となるには、登録を受けなければならない。
2 他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行おうとする社会保険労務士は、事務所を定めて、登録を受けなければならない。
3 事業所に勤務し、第二条に規定する事務に従事する社会保険労務士(勤務社会保険労務士)は、社会保険労務士名簿に、当該事業所の名称、その他の登録を受けなければならない。
第一項で、社会保険労務士として登録することが定められており、第二項で開業登録、第三項で勤務登録が定められています。
「その他登録」の社労士は、第一項で登録し「社会保険労務士」となりますが、第二項、第三項には該当していない者であり、厳密に解釈すれば、無資格者なら問題なく行える、自分が勤めている会社の社会保険事務も行えないことになります(一旦退会するか、勤務先を登録しなければならない)。
これは、社労士の独占業務でないコンサル業務(3号業務)も同じです。
社労士の独占業務ではないので、本来なら誰でも「他人の求めに応じ報酬を得て、業として」行うことができます。
社会保険労務士法第二十七条(業務の制限)の抜粋
社会保険労務士でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、第二条第一項第一号から第二号までに掲げる事務を業として行つてはならない。
というように、社会保険労務士でない者が行えない業務に、3号業務は含まれていません。
一見、「その他登録」でも3号業務ならできそうにも見えますが、社会保険労務士として登録している以上、法第十四条の二第二項(先ほどの開業登録の規定)の、「他人の求めに応じ報酬を得て、第二条に規定する事務を業として行おうとする社会保険労務士は、事務所を構え~」の規定に引っかかり、行うことはできないようです。
結局、「その他」登録は、社会保険労務士を名乗ることができる代わりに、社会保険労務士でない者でもできることができなくなっています。
社労士を名乗る以上、中途半端なことをされては困る、ということなのでしょう。
それでも、私も「社会保険労務士」のひとりです。
社会保険労務士法第一条(目的)
この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
この社労士法の目的条文に従い、その他登録の私にもできることを頑張ります!
>> その他登録であっても、ひとりの社労士として発言しなければならない
とりあえずは、「他人の求めに応じ報酬を得て、業として」ではなく、「社労士法第二条に規定する事務」ではない「単なる情報発信」をすることは問題なさそうなので、「その他登録」社会保険労務士としてブログを書き続けて行こうと思います。
ということでブログを書き続けていたら、その他登録6年目に突入していました!
まだまだしばらくは、その他登録を続けます。
>> 6年目に突入!私の「その他登録」社労士生活は、まだまだ続きます!
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