餅は餅屋、労務問題は社労士?、誰でも行える3号業務を依頼する理由

公開日:   最終更新日:2019/05/05

日々の労働問題についての相談や指導、これは社労士の独占業務ではありません。
社労士法に定める「社労士3号業務」ではありますが、別に社労士でなくても、誰でも行うことができます。

そういう理由もあってか、顧問税理士のいない会社はほとんどないのに、顧問社労士がいない会社はたくさんあります。
労働問題は、別に社労士でなくても、経営コンサルタントでも税理士の先生?でも、誰でも相談に乗ることができますからね。

何で税理士!?と思われる方もいるかもしれませんが、どんな小さな会社でも、税の申告は税理士さんに頼むのがふつうです。
相談できそうな外部の「先生」が税理士さんだけって会社、けっこうありますよ。

社労士は企業に雇われながら労働者の権利を守ることで、中立性を保っています

誰でもできる労働相談を、なぜ社労士にお願いする方が良いのでしょうか。
もちろん労働問題の専門家だからではありますが、この「中立性」も大きな理由のひとつです。
第三者の立場から、正確な判断ができるのです。

社労士は、労働者の権利を守る労働局や労働基準監督署と同じ「厚生労働省」が管轄官庁です。
厚生労働省管轄下の全国社会保険労務士会連合会に所属し、社会保険労務士法という法律の下で活動しています。

企業側(雇う側)を管轄する「経済産業省」との関係でみれば、労働者よりの立場にも見えます。
だからと言って、社労士は労働者の絶対的な味方というわけでもありません。
社労士は基本的に会社側が雇い、「顧問料」とういう名目で報酬を受け取っているのです。

つまり社労士は、会社が雇い主です。

こうして社労士は、企業(雇う側)から報酬を受け、労働者側に立った管轄官庁によって厳しく監督を受けるという形で、中立性を保っています。

一部の悪質な企業の言いなりになって、労働者に不利な扱いをしたりすると、管轄官庁下の社労士連合会から指導を受けてしまいます。
だからと言って、一部の労働者の、わがままに近い権利を主張するような社労士では、どこの企業も雇わないでしょう。

そういう微妙なバランスの中、中立を保っているのが社労士なのです。

この中立性は、社労士法から読み取ることもできます。
「労働者のため」の法律を円滑に回すことで、健全な「事業活動の発展(=企業の発展)」を目的とするのが社労士法です。

この法律は、社会保険労務士の制度を定めて、その業務の適正を図り、もつて労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資することを目的とする。
(社労士法第一条)

「社労士は労働者の味方だから」という誤解

企業の中には、社労士に依頼すると労働基準法などの法律を厳格に守らなければならなくなる、それではあまりに窮屈だ、と考えている会社もあります。

今の法律や行政が、あまりに労働者保護に手厚く、労働基準法などをすべて完璧に守っていては企業活動に支障が出る、という声があるのも知っています。

実際に会社員として企業で働いている私にも、その言葉は十分に理解できます。
一部には、問題のある本当にわがままな労働者を抱え、その処遇に苦悩している企業もあることは確かです。

「労働者の保護が手厚すぎる」という一部の批判に対しては、私はこのように考えています。
今はまだ、すべての会社で法律が守られ労働者の権利が保護されているわけではありません。
大人と子供のケンカでは、大人がある程度ガマンしなければいけないように、圧倒的に力を持つ方が多少の制約を受けるのは仕方がないでしょう。

そんな制約を気にせず企業の論理を押し付けるよりは、職場の労働環境を整え、社員の定着率やモチベーションを上げることを目指す方が健全です。

顧問社労士のいない会社は、是非、社労士との顧問契約も前向きにご検討ください。

(ちなみに私は「その他登録」ですので、顧問契約はできませんよ。ふつうに頑張っておられる、開業登録の先生にご相談ください!)

社労士の知識と経験はもちろんのこと、その看板(名前)もうまく使いましょう

私はいちおう社労士ですが、勤めている会社では、「ちょっと労働法規にもくわしい普通の社員」です。
ちょっとは詳しいので、総務や人事の方から相談を受けたりすることもありますが、そんなときは必ず最後に一言。

  • 「念のため、顧問社労士の先生にも確認しておいてくださいね。」

社内の労働問題を解決するための話し合いには、「社労士の先生が言うには~」から始めると、説得力があります。

「ネットで調べてみたら~」や「○○さん(社員)が言うには~」では、本当かそれ?になってしまいます。

労働問題は、その背景や当人の事情などにより、一件一件、正解が異なる可能性のあるものです。

労働問題が実際に起きた場合の説得には、専門家の「金看板」が必要になります(水戸黄門の印籠とでもいいましょうか)。

社労士など「専門家」と呼ばれる人たちは、そのひと言ひと言に責任を持って発言しています。
その「責任あるひと言」が重く、説得力があるのです。

・・・ですから私は、いまだに会社で社労士を名乗る勇気がありません。


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