就業規則は社労士に作ってもらって自分で労基署に届けるのがおススメ

公開日:   最終更新日:2019/10/12

就業規則は、常時10人以上の従業員がいる場合に作成する義務が生まれます。

そして作成した就業規則は労働基準監督署に届け出なければなりません(正確には「所轄の労働基準監督署長に届け出ます)。

この就業規則、思っているよりずっとずっと頻繁に、変更や追加を行う必要があります。

  • 法改正があった場合
  • 在宅勤務や時短正社員など、新しい制度を取り入れた場合
  • 勤務時間の変更や賃金計算の変更などの会社都合

毎年なんて当たり前、年に数回変えなくちゃならないこともあったりします。

その昔、一度作った就業規則は、5年10年そのまま放っておかれることが普通でした。しかし「働き方改革」が叫ばれる今、その変更頻度や内容の複雑化などが加速しています。

社内で作業するのはもう限界!就業規則の作成はプロに頼もう

プロ?・・・もちろん、社労士です。そうです。顧問社労士にお願いしましょう!

就業規則の作成や変更は、社会保険労務士にお願いしなくても社内で行うことが可能です。私も勤務する会社で、実際に就業規則の変更や作成を担当していたこともあります。

その経験から、断言します!

  • 就業規則の作成や変更は社労士の先生にお願いしよう!
  • それも顧問社労士にお願いしましょう
  • 顧問社労士がいなければ、今回作成をお願いする先生と、ぜひ顧問契約を結びましょう!

就業規則作成は社労士にお願いすることを、おすすめする理由

便利な世の中になりました。
厚生労働省も「モデル就業規則」を公開し、「規程例や解説を参考に、各事業場の実情に応じた就業規則を作成・届出してください。」としています。
しかしこの「各事業場の実情」を正確に把握し、それを規則に「有効に反映」させるためには、ある程度の知識と経験、それに文章力が必要となります。

また、時間もかかるでしょう。
社労士に依頼するとなると、それなりの費用が必要になりますが、作業させる社員の時給で換算すれば、結局安い買い物になります。

増え続ける分冊、どんどん増えるページ数、本当にもう限界!

就業規則を巡る環境は、昔に比べて大きく変わりました。

私が社会人になった30年前は、ちゃんとした就業規則のない会社すらありました。私が最初に就職した会社もそうでした。

次に勤めた会社では、印刷された就業規則を入社時に渡されました。その時の就業規則は約30ページのペラペラなものが1冊、そしてその後10年間、一度の改定も行われませんでした。

たった1冊にすべてが詰め込まれていた就業規則が今では・・・

  • 就業規則(本則)
  • 育児休業規程
  • 介護休業規程
  • 再雇用契約社員就業規則
  • 賃金規程(残業代の計算が複雑になったため、多くは分冊)
  • 退職金規程(ポイントによる退職金への移行に伴い、多くは分冊)
  • 特定個人情報保護規程(マイナンバーの導入により新設)

どんな会社でも、少なくともこれくらいはあるのではないでしょうか。法改正や時代の要請に伴い、増える一方です。

他にもありそうなのは、

  • 機密情報保護規程
  • パート、アルバイト就業規則

などなど。なんかキリがありませんね。

また、「決まりごとは全て規定に明記する」という世の中の流れから、「就業規則細則」などを別で作り、諸届や出張時の決め事、慶弔金や経費精算などまで細かく定めていると、全部で何冊何ページになるか分かりません。

そうしている内にまた法改正があったり、次々と忌避事項が新しく生まれてきます。
普通の社員が行える限界を超えています。

「顧問」社労士に頼む表向きの理由

そうなのです。就業規則が完成してもそれで終わりではありません。

  • 先日、改正個人情報保護法が施行されたが、自社の就業規則を変更する必要があるのか
  • 最近、また新しく「○○ハラ」というハラスメントが出てきたようだが、今の就業規則で規制できているか

判断に迷いますね。また改正しなければなりませんね。

「顧問」社労士の先生に常にアドバイスいただけるよう、「継続して」お願いしておけばひとまず安心です。・・・というのは表の理由です。

顧問社労士にお願いする本当の理由

外部の専門家である「社労士」が作った就業規則だから・・・、と言える、ということが本当の理由です。

実際、ここまで肥大化した就業規則の細かなところまで把握できている社員は、ほとんどいません。このことが普段の業務で大きな問題とならないのは、民法や刑法の細かい部分を知らなくても、普通に暮らしていけることに似ています。

就業規則は、実際に何か問題が起きたときに、「しっかりと規定されているか否か」が問題になります。
具体的には、社員が問題行動を起こした時に就業規則に基づき注意できるのか、社員が権利を主張した時に就業規則上はどうなっているのか、などという場合です。

このようなときは、ふつうは顧問社労士に相談します。
その顧問社労士が関与した就業規則に基づき、迅速かつ正確な対応が期待できるというわけです。

社員が就業規則をいじれば、かなりの確率で「言葉足らず」や「矛盾」が出てしまいます。
このことが原因で労働問題がこじれても、担当社員も上司もそんな責任はとれません。

就業規則担当者にとっての責任分散とリスク回避。
これが、就業規則のことは顧問社労士に依頼することをお勧めする、本当の理由です。

新しい就業規則ができたら、あとは社内での周知作業と代表者の意見を聞く作業が待っています

就業規則の作成や変更はプロである社労士に頼むべですが、一方、その変更後の手続きは、そのほとんどを社内で行います。と言うより社員が行う方が効率的ですし、多分社労士に相談しても、「書類はこちらで作りますので、作業は社内で行ってください」と言ってきます。

  1. 労働者の代表の意見を聞く(意見書を作る)
  2. 社員への周知

まずはこの二つです。
労働組合のない会社も多いと思いますので、具体的には下記の作業を行います。

  • 社内の共有サーバーなどに、就業規則をデータで置く
  • 就業規則の変更をグループウェアなどで回覧、または一斉メールで通知
  • この回覧またはメールで、意見を聞く代表者の選任を依頼

といったところでしょうか。
この就業規則変更の回覧(メール)は例えば、

「就業規則を変更します。変更の概要は○○です。変更した就業規則は○○にありますので各自確認してください。また、この変更に関しての意見を聞く労働者代表を、○月○日の朝礼で挙手によって決めます。」

というくらいで十分です。
ここでグループウェアやメールを使うのは、「周知した」という記録を残すためです。
昔は就業規則を印刷したり、プリンターで出力して綴じたものを配ったりもしていましたが、ページ数も増え、変更も頻繁に行う現代では大変です。

「労働者代表」の選出は、少しだけ注意が必要

労働者代表は「管理職でない方」でないといけません。
管理職はその役割から、使用者側の立場となります。
労働基準監督署に変更届を提出する際に、確認されることもありますので注意しましょう。

また、労働者代表の選出は、使用者側の人間が指名して「この人でいいですか?」と聞くのはダメだという見解もありますので、ご注意を。
逃げ道としては、社員の何人かに誰かを推薦してもらい、「この人でいいですか?」と聞きましょう。

このとき、推薦された人が代表者でいいかどうかを、グループウェアなどで回覧して決めても構いません。
「○○さんを社員代表として意見を聞き、労働基準監督署に届け出ます。ご異議がある方はお申し出ください」くらいの文章で大丈夫です。
異議が半数以上出なければ、これで「挙手による選出」ということになります。
労基署で聞かれたら、「挙手による選出です」と堂々と答えましょう。

就業規則変更届の提出は社員でOK!というか、ぜひ行きたい! 行かせてください!

ここまできたら、就業規則の変更届も社員で提出してしまいましょう。
もちろん社労士の先生に提出代行していただいても問題ありませんが、ふだん外出する機会の少ない総務部門の者にとっては、せっかくの出かけるチャンスです。
私も昔、何度か行きましたが、数少ない楽しみのひとつでした。

変更届と意見書と就業規則原本をそれぞれ2部ずつ作成。
所轄の労働基準監督署へ行って、労働関係の受付カウンターから、

「就業規則変更届を持ってきました。」

と声をかければ、署員の方がやってきて慣れた手つきでポンポンと受付印を押してくれます。

「はい。ご苦労様です。」

というねぎらいの一言とともに、一部ずつをこちらの控えとして返してくれます。
稀にですが、署員の方から質問されることもあります。

「どこを変更されたのですか?」
「この労働者代表の方は、管理職ではありませんね?」

あったとしてもこれくらいです。
監督署によって多少の違いがあるかもしれませんが、内容について深く問われることはありません。

「どこを変更されたのですか?」という問いかけに対して余裕があれば、「ここの一文を一応足しておいたのですが。まあ実際適用するのは難しいですけど。」などとプロっぽくつぶやいてみてください。
「そうですよね。規定して周知したからといって争いになればわからないですよね。その辺ご理解いただいているようですから大丈夫でしょけど・・・。」などと意外と会話が弾み、勉強になります。

自信がなければ、「すいません。提出してくるよう言われただけなのでよくわかりません。」と言ってください。
追及?は多分そこまでです。

安心して提出してください。

これで無事、就業規則の変更(作成)手続きは終わりです。


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