特定社会保険労務士は、社労士の上位資格ではなく業務範囲の拡大資格
特定社会保険労務士は、従来の社労士業務に加えて「紛争解決手続代理業務」を行うことができます。
これだけ聞くと、特定社労士は社労士の「上位資格」のように聞こえますが、それは違います。
あくまでも業務範囲が広がっただけで、従来からの社労士業務を行う上での優劣や違いはありません。
一級建築士と二級建築士や、測量士と測量士補などの扱える仕事や権限が異なる資格群とは、根本的に違うのです。
もちろん、特定社労士が行うことのできる「紛争解決手続代理業務」は大切な業務であり、将来的には社労士業務の中心になるのかもしれません。
しかし、すでに特定社労士になろうとする意欲を失ってしまった私は、以前の記事の中で、「特定社労士でなくても十分活躍できる、というか違う役割がある」と書きました。
>> 特定社会保険労務士になるための、「勤務等」その他登録という選択肢
その私の考えを、説明します。
今はまだ、社労士の3人に2人は「特定」ではない社労士です
特定社会保険労務士の正確な人数は、調べ方が悪いのか正確には把握できませんでしたが、社労士40,907人(平成29年9月30日現在)のうちすでに15,000人ほどにはなったでしょうか。
この15,000人というのは、特定社労士の試験(紛争解決手続代理業務試験)の合格者数の累計です。
この合格者の大部分が付記申請しているとしたら、社労士3人に1人の割合ですね。
近年の特定社労士の試験(紛争解決手続代理業務試験)の合格者数が1000人に満たないことを考えると、社労士の登録者数が500人ずつ増加する時代に入ったとしても、しばらくはこの「特定社労士よりも、特定ではない社労士の方が多い」状態が続きそうです。
>> 社労士登録者数の推移。年間1000人増加の時代から500人増加の時代へ
このペースでいけば、5年後から10年後には「特定社労士は、社労士の2人に1人」の時代がくるのでしょうか。
「認定」司法書士や「付記」弁理士などと比べれば、まだまだこれからの資格なのかもしれません
この「特定」社会保険労務士、別に社労士制度だけに限った制度ではありません。
例えば司法書士は、法務省の認定を受けて認定司法書士となると、一定の範囲で紛争解決業務を扱うことができます。
また、特許出願などを専門とする弁理士も、特定侵害訴訟代理業務試験に合格したことを付記すれば、付記弁理士として特定侵害訴訟の代理人になることができます。
・認定司法書士は、16,512人(司法書士22,283人の74%)
(日本司法書士会連合会調べ 2017年4月1日現在)
・付記弁理士は、4,122人(弁理士11,497人の36%)
(日本弁理士会の公表資料より 2017年10月31日現在)
司法書士はもともと弁護士に近い仕事ですが、すでに4人に3人が認定司法書士となっています。
これらに比べれば、特定社労士は「まだまだこれからの資格」なのかもしれません。
紛争解決手続代理業務は、今はまだ社労士業務の一部に過ぎない
確かにこれからは、紛争解決手続代理業務の重要性は高まっていくのでしょう。
しかしまだまだ「個別労働紛争解決制度」などは、広く認知されているとは言いがたいのが現状です。
会社側から見ても、顧問社労士の他に顧問弁護士とも契約しているところが大半ですので、顧問社労士が「特定社労士」であるかを意識することも少ないです。
社労士は、まだまだ従来からの社労士業務を期待されています。
ちなみに私がここ最近、仕事の依頼をした社労士の先生は、特定社労士3人と、特定ではない社労士1人でした。
特定社労士だから仕事を依頼したわけではありませんが、がんばって営業している若い先生には、特定社労士が多いのかもしれませんね。
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