独特な試験制度を好意的に見ればわかる、社労士に求められている素質
社労士試験のしくみ(制度)は独特です。
国家試験の中でも異彩を放っています(私見ですが・・・)。
受験者からはけっして評判が良くないです。
というか、はっきり言うと評判が悪いです。
- 「模試で上位の常連でも落ちる」
- 「少なからず、「運」の要素がある」
みんなムチャクチャ言いますね。
私も受験生時代には、そう思っていました。
平成28年度試験からは、先人たちの努力の結果、合格基準が発表されるようになりました。
少なくとも「合格基準が理解できない」とか、「救済の基準がわからない」ということは、亡くなったはずですが・・・。
評判の悪さは独自の制度、「科目別の足切り」のせい?
「足切り」とは、総合点数での合格ラインとは別に、科目別で設けられている「最低ライン」のことです。
これだけを見れば、別に珍しい制度ではありません。
社会保険労務士試験だけではなく、たとえば行政書士試験にも設けられています。
でも、社労士試験の「足切り」って違うんです!
この「足切り」の非情さは、切られた者にしか分からない
はい。
切られ続けたひとりです。
資格試験というものは、ある程度の時間をかけさえすれば、だれでも合格ラインに達することができます。
- 試験範囲が決まっているから
- 出題傾向が固まっているから
当たり前ですが、合格ラインに達することと合格することは別のものです。
社労士試験は、この合格ラインに達してからが本当の勝負なのです。
どんなテストでも、まんべんなく正解することは難しい
大学受験のとき、共通一次試験やセンター試験を受けられた方も多いでしょう。
どの科目も、同じような点数でしたか?
違いますよね。
得意科目と苦手科目があるのがふつうです。
ばらつきがあって当たり前です。
でも、とびぬけて点数の悪い科目があったら困りますよね。
この科目ごとに「足切り」があっても、納得はできるでしょう。
でも、ひとつの科目の試験を思い出してみてください。
設問があって、それに続くいくつかの小問があるのがふつうです。
設問とは、「以下の文章を読んで次の問いに答えなさい」っていうやつ。
その後に、小問がいくつか続きます。
すべての設問で、小問の何個かずつは必ず正解できていましたか?
ある設問では全滅でも、別の設問で全問正解して総合点を稼いでいませんでしたか?
この設問ごとに、「足切り」があったらどうでしたか?
社労士試験の「選択式」がつらすぎる・・・。5問中3問正解を、8回すべてに繰り返す
社労士試験は、非常に細かく「足切り」が設定されています。
択一式試験は、7科目あって各10問中4問正解すればOKです。
これくらいなら、まあ良しとしましょう。
1科目からバラバラな出題が10問あれば、4割くらいの正解なら何とかなります。
こわいのは、もうひとつの「選択式」試験です。
8科目もあるのに、1科目につき各5問しか出題されません。
それなのに、5問中3問以上を正解し続けなければいけません。
しかも、ひとつの事柄を説明した文章から5問全部が出題されることもあります。
ふつうは2つの事柄から5問です(←これでもきびしい)。
100個の知識のうち、99個を完璧に知っていても、知らない1個が出題されたらアウトです。
5問中3問の正解を、約9割達成できる実力者でも、これを8科目続けなければなりません。
90%×90%×90%×90%×90%×90%×90%×90%× = 43%!
なんと9割以上の確率で合格点を取れる方でも、それを8科目続けられる可能性は5割を下回ってしまいます。
これが、「社労士試験は、模試で成績上位の実力者でも落ちる」ということにつながっています。
「社労士試験合格には、運も必要」と言われる理由がここにあります。
もちろん、有名な「救済制度」があります。
難易度を調整するために、本来3点以上必要なところを、2点以上(ごくまれに1点以上)を合格とするという制度です。
しかし、どの科目に救済制度が適用されるかは、合格発表日まで分かりません。
いくら「合格基準の考え方」が公表されても、他の受験者の得点を知り得ない以上、どうしようもありません。
受験機関の合格基準予測がいくら正確になってきたと言っても、完璧に当たるわけではありません。
この社労士試験の制度を、もう少し好意的に見てみましょう
私の社労士合格までの歩みです。
不合格は、すべて足切によるものでした。
- 1年目、ひと通り勉強し、意外と解けたけれども、1点足りず
- 2年目、意欲高く勉強し、絶対の自信でのぞむも、1点足りず
- 3年目、もはや惰性だけ、手ごたえもなかったが、なぜか合格!
これを社労士試験側からすると、こう見えませんか?
- 1年目、ひと通り勉強しただけの、暗記野郎は通さない
- 2年目、ただ点数を取れるだけの、試験職人も通さない
- 3年目、コツコツと努力を続けてこられたのなら、そろそろ通そうか
う~ん、そうでしたか~。
もちろん私も、1年目にラッキーパンチで合格する可能性もありました。
世間では1年で全てを軽々と把握して、楽々合格する方もいるのでしょう。
でも、基本的にはそんな方は少数派です。
- 暗記しただけ、試験テクニックだけの実力者は落とす
- 受かる実力を毎年維持できた者の中から合格者を出す
いい試験に思えてきませんか?
「足切り」がない試験は、実力さえあれば受かります
大人気の国家資格、宅建試験などと比べてみればわかります。
宅建試験は全部で50問。
このうち7割にちょっとプラスした、36点を取れば合格です。
足切りなんかはありません。
例えば4科目のひとつである「法令上の制限」が、8問中0点だったとしても大丈夫です。
他を全問正解すれば42点ですから、これでも合格です。
宅建試験は実力さえ身につければ、必ず合格できます。
見えてきた? 社労士試験から見た「社労士になってほしい人、受かってほしい人」
試験テクニックや、暗記だけが得意なやつ(←私もです^^)なんか、いらない。
飛び抜けて優秀なやつは、どっちでもいい。
平均的な知識を持ち、コツコツと何年も何年も努力できる方に社労士になって欲しい。
社会保険制度も労働関連法規も、毎年のように法改正があります。
まじめに継続して勉強できる人でなければ、ついてはいけません。
試験テクニックや丸暗記が苦手な方でも、まじめに努力さえ続けていれば、いつかは夢がかなう制度なのかもしれません。。
合格したから言えることかもしれませんが、
この試験制度、そんなに悪くないのかもしれません。
受験されるみなさん。
あきらめずにがんばってください。
スポンサーリンク